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「自分に寛容であれ」と障害をものともしないニューサム州知事

Updated: Jun 19, 2020


【目次】

ディスレクシアとは?

ディスレクシア(発達性読み書き障害)を抱えるアメリカの政治家、ニューサム知事

  1. ニューサム知事が自分の発達性読み書き障害を知った日

  2. 母の思い

  3. 読み書き障害を抱えながら執務をこなす方法

  4. 読み書き障害を抱える政治家としての成功の秘訣

JPS Groupサイトの「子どもの心のケア」のページの「災害時における障害のある

子どもへの配慮」のリンクもご参照ください。


ディスレクシアとは?


ディスレクシアとは、国立成育医療研究センターによると、文字の読み書きに限定した困難さをもつ疾患で「発達性読み書き障害」とも言われます。しかし、知的能力の低さや勉強不足が原因ではありません。脳機能の発達の問題とされています。よって発達障害の学習障害に位置づけられています。日本では、国立精神・神経医療研究センターによると、「学習障害の中核を占める発達性読み書き障害(ディスレクシア)は、日本の人口の約0.7~2.2%、100~200万人いる」(平成25年のデータ)と推定されています。


欧米ではディスレクシアを抱えていると公表した著名人には以下の方々がいます。

歌手のジョン・レノン、女優のキーラ・ナイトリー、理論物理学者のアルバート・アインシュタイン、アメリカ初代大統領ジョージ・ワシントン、映画監督のスティーブン・スピルバーグ、ボクシング世界チャンピオンのモハメド・アリ、英国元首相ウィンストン・チャーチル、ミステリー作家のアガサ・クリスティ。


私の大学院時代の同級生にもディスレクシアを抱えていた男子がいて、普通の人と違う勉強法で宿題をこなしていると言っていました。その時にはじめてこの学習障害について詳しく知りました。



ディスレクシア(発達性読み書き障害)を抱えるアメリカの政治家、ニューサム知事

カルフォルニア州のギャビン・ニューサム知事は発達性読み書き障害を抱えながら執務をこなしている
ギャビン・ニューサム カルフォルニア州知事

上のリストに載っていない著名人で今日ご紹介したいのが、カルフォルニア州のギャビン・ニューサム知事です。日本ではまだあまり知られていないかもしれませんが、ニューサム知事は、新型コロナウイルスの患者数が増えだしてカルフォルニア州北部の市やIT企業が早期に屋内退避を促した時、3日後にすぐに州全体をシャットダウンしました。他の州に先駆けて全米で最初に外出禁止命令を4000万もの州民に対して出したのもニューサム知事でした。その効果か患者の増加割合や速さが他の州ほどではありません。そうした対応でニューヨーク州のクオモ知事と並んで、今全米で注目を浴びている民主党の若手の州知事です。


元起業家で元サンフランシスコ市長。政策通で、記者会見は原稿もほとんど見ずにこなす。長身にフォトジェニックな風貌。こういうところから将来の民主党大統領候補の一人かと目されています。


1. ニューサム知事が自分の発達性読み書き障害を知った日

5歳の時にディスレクシアという診断を受けていたニューサム知事は、実はある程度大きくなるまで母親から自分の障害について全く知らされていませんでした。妹が楽々学業をこなしていた一方、兄であったギャビン・ニューサムは読み書きに大変苦労していました。彼らのお母さんは2つの仕事を掛け持つシングルマザー。小学5年生くらいの時に、その母が不在のすきに母の机を覗いてみると、「ギャビン」という自分の名前と「ディスレクシア」という意味のわからない言葉がたくさん書き込こまれている書類が山積みになっているのを見つけてしまいます。


2. 母の思い

母の帰宅後、なぜ今まで隠していたのか問いただしてみると、

「こういう読み書きの障害があるから、今まであなたを放課後や夏休みの特別な活動に入れていたのよ…あなたに障害者として負い目を感じながら生きてほしくなかったから隠していたの。」

と、言ったそうです。


赤貧で働き者のお母さんにとってニューサム知事と彼の妹の二人の子どもの教育がすべてで、あるお金はすべてに教育費に注いでいました。子どもの頃のギャビンは、恥ずかしがり屋だった上に、読み書きができずに学校でいじめられました。大学進学まで勉学では苦労し、お母さんが学期中や夏休みに補修授業に入れてくれていなければ今の自分はない、といいます。

障害があるからと言って自分の人生をあきらめてほしくないという母の思いがあったんです。

と、ニューサム知事も後に語っています。


3. 発達性読み書き障害を抱えながら執務をこなす方法

大人になってもう障害は乗り越えたかと聞かれると、そうだったらいいが、そんな簡単なものではない、と言います。現在、知事として週に何回も会見を行わなければならないので大変だそうです。


鍵はovercompensate すること(弱点・過失などを補うために[反対]のことを過剰に行うこと)。具体的には、

  • 自分にない他のスキルを学ぶ

情報を何回も耳で聴く。新しい学び方を見つける。

ニューサム知事は読み書きができない一方、たぐいまれな記憶力があるそうです。


彼が集中してものを読むコツは、そもそも字をきちんと読めないので、

  • 本を読む時は下線を引く・ハイライトをつける・ページの余白に書き込みする・字を丸や四角で囲む。

  • 1回では理解できないので、もう一度印をつけた部分を読み直す。その瞬間に記憶する。3回目くらいで完全に内容をマスターする。


ものすごくたくさん書き込むので、誰も本を貸してくれないそうです。


ニューサム知事はスピーチ原稿は書けない代わりにアドリブで行うそうですが、努力家で、内容を完全に把握するよう入念に準備し、1分のスピーチに1時間、30分の演説に30時間くらいの準備時間をかけてしまうとのことです。


新型コロナウイルス対応では、読み書きができないのを補うために、専門家と会話し、政策ポイントを繰り返し勉強することでそれらを自分のものにして情報を習得しているそうです。


4. 発達性読み書き障害を抱える政治家としての成功の秘訣

会見をするニューサム カルフォルニア州知事(AP通信)

成功の秘訣は、と聞かれると、

「自分に寛容になること、忍耐強くなること。完璧になる必要はない。間違えてもいい。間違えてもその過程を楽しむこと。」

だそうです。ニューサム知事の一番好きな引用は、

“You don’t want to be the best of the best.” (仮訳「トップ中のトップを狙うべきではない。」)

「トップ中のトップを狙うべきではない。自分が今取り組んでいること、それができる唯一の人間になろうと努力するべきだ。誰もが独自の発想をもっているものだから、他の誰もが取って代われないものがある」

親としてもそういう温かい目で子どもたちを見守って行かれれば、一人でも多く自分だけのたった1つの花が開くのではないかと感じます。


また、災害時だけでなく、災害時に備えた平素からの障害のある子どもへの特別な配慮事項については、JPS Groupサイトの「子どもの心のケアページの「災害時における障害のある子どもへの配慮(国立特別支援教育総合研究所)」の青い箱にリンクがありますので、ぜひご覧ください。皆さんからのコメントもお待ちしています。


渡邊理佐子

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