今年の8月に発表された日本財団の研究から、若い世代(18歳から35歳)の日系人(海外に移住した日本人及びその子孫)に日本人としてのアイデンティティを意識する方が多いことが分かりました。6000人以上の回答を集めた世界規模の意識調査で、対象者の日本語能力は比較的低く、食生活も現地の文化に馴染んでいる方がほとんどでした。それでも、大半の方が「頑張る(82%)」、「尊敬(78%)」、「感謝(69%)」、「もったいない(67%)」といった日本的価値観を重要視していたという結果は驚きでした。日本語能力と文化継承が強い相関があるという結果も出ていたので、文化としてではなく親の思いが代々子どもに伝わっているということなのかもしれません。
育児に際して、日本人としてのアイデンティティを育てようと意識する親は少ないかもしれません。でも、子どもは親のふとした日本びいきを見逃さないように思います。私自身、子どもと一緒に鑑賞する本や音楽や映像は、何気なく「日本」に繋がる作品を選ぶ傾向があります。その影響もあってか、娘たちは米国にいながら日本のことをよく知っています。
最近ハマっている映画はスタジオライカの製作した「KUBO/クボ 二本の弦の秘密」。日本を舞台にしたストップモーション・アニメーションの映画です。娘2人はオープニングからかぶりつきで、2週間ほぼ毎日のように観ていました。2人の心に響いたのは、紛れもなく映画に映し出された日本文化。
オープニングは荒れる波間に一艘の船が現れ、打ち掛け姿の女性が命辛々浜辺に打ち上げられるシーンから始まります。その女性の子どもが主人公のクボ。片目を失った眼帯姿が印象的な、着物と草履姿の少年で、三味線の名手。魔力を持つ三味線の音色で折り紙細工を操り、母親から語り継がれた物語を町人に語り、日々の糧を得ています。
建物も景色も、町民の温かい眼差しや支え合う様子も全てが日本的で、着物や武具にも家紋が入れられていました。それに気付いたのも長女でした。NHKの番組「デザインあ」で学んだ家紋の一つが着物についていたのだそうで、「二つ巴(ふたつどもえ)だ!」と感動していました。
物語は親子の愛や月の帝との戦いに移行していくのですが、描かれているテーマは竹取物語や平家物語などが元になっているように感じました。そして、気が遠くなるほどの時間と手間をかけて丁寧に作り上げられた1体1体の人形に命を吹き込む様子は文楽にも通じる印象を持ちました。
スタジオライカの作った映画は5本のみ。全てが秀逸な作品で、飽きっぽい娘たちも瞬時に物語に引き込まれていきました。折を見て、他の作品もこちらでご紹介したいと思いますが、我が家の娘たちの一押しは圧倒的にクボ。長女も次女も主人公のように三味線が弾きたい!クリスマスには三味線が欲しい!と大騒ぎ。熱狂ぶりがあまりに続くので、米国で三味線なんて買えるのかしらと調べてみたら、気軽に買える金額ではありませんでした。そもそも子どもに三味線を教えて下さる先生も見つからない!異国で日本文化を継承するには日本語能力だけでなく経済力も必要なのかも・・。難しい問題です;仁美
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