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オンライン講演会「全盲のヨットマン岩本光弘氏に学ぶレジリエンス」を終えて

コロナ禍で一変した私たちの生活は「ニューノーマル」と呼ばれ、いつしか元の日常を取り戻すのではなく、新たな「With/Afterコロナ」の時代を見据える必要が出ています。この、見通しの立てにくい時代に必要な力と言われているのが、レジリエンス(resilience)。挫折や苦境から回復する力のことで、しなやかな強さ、精神的回復力、復元力などと訳されています。最近では、ストレスに立ち向かう潜在的な力というだけでなく、困難を乗り越えて人間的な成長をも果たす力であることが指摘されています。



今回は、このレジリエンスをご自身の人生で体現されている全盲のヨットマン岩本光弘さんのオンライン講演会をぽーと会さんと共催致しました。大変多くの方にご参加いただき、私自身大いに学ぶ時間となりましたので、ここで当日のお話を少しシェアさせていただきます。


彼の絶望を希望に変える生き方は多くの人に勇気を与えるとして、NHKドキュメントに取り上げられました。英国のBBCでも大きく報道されましたので、ご存知の方も多いかもしれませんが、岩本さんの略歴をウェブサイト(下記URLおよびQRコード)から一部引用します。


岩本さんは、熊本県天草生まれの57歳。16歳の時に完全に視力を失い、絶望の中で死をも覚悟した時があったと言いますが、「生きろ」という声を聞き、困難に挑み続ける人生がスタートします。熊本県立盲学校で鍼灸を学び、筑波大学で理療科教員資格を取得、奨学金を得て米国留学後、筑波大学で14年間鍼灸手技療法の教鞭をとりつつ、青山学院大学で心理学も学びます。鍼灸院を開業する傍ら、ブラインドセーラーとして大小合わせて100以上のヨットレースに参加。2014年、キャスター辛坊治郎氏と太平洋横断に挑戦するも、マッコウクジラに衝突し遭難。海上自衛隊に救助され一命を取り留める。その後、海の恐怖を克服するために、ヨット操縦以上に恐怖の伴う遠泳に挑戦。2017年、アリゾナ州「IRONMAN」に参加し完走。「絶対に諦めない」という信念から、2019年2月、太平洋横断に再挑戦し、見事に成功されました。

今回うかがったお話は、太平洋横断に最初に挑戦した時の遭難体験から。11時間の漂流がどれほど恐怖に満ちたもので、その後のメディアや大衆からの非難がどれほど辛いものだったかが語られました。全盲の人間が太平洋横断などという大望を抱くなと言われ続け、心がその声に流されそうになった時、2度目の太平洋横断の挑戦を共にしたDream supporterに出会ったと言います。そして、夢を抱くこと、そして、その夢を支えてくれるDream supporterとの出会いに気付き感謝すること、失敗しても自分を責めない、沈んだ心はそのままにして「時」が来るのを待ち、行動から変えてみる、声を掛け合う人との繋がりを大切にする・・と、絶望を希望に変えていった経緯を話されました。

特に印象的だったのは、「声」の話。岩本さんが16歳の時に聞いた「生きろ」という声は「視力を失ったお前が困難に挑む姿は誰かを勇気づける」と教えてくれたのだそうです。最初は、その意味が分からず、自分の運命を呪ったそうです。歯磨き粉すら満足につけられない自分に何ができるんだと憤ったとも言いました。しかし、気付けば歯磨き粉は付けられるようになり、熱い味噌汁もこぼさず飲めるようになり、恐怖に満ちていた戸外に白杖を持って出かける日が来たのだそうです。小さな一歩を重ねながら、少しずつ目標を高くし、富士山登頂を果たした時に自分の挑戦が人々の勇気に繋がることを実感したそうです。そして、自分の挑戦が誰かの勇気になるなら挑戦し続けたい!という思いから、困難に出会ってもその意味を考え、克服し続け、遂に全盲で世界初の太平洋横断という偉業を果たします。


岩本さんは、自分を特別な人間だと思って欲しくないと言いました。レジリエンスは誰もが持っている力。自分自身のレジリエンスに気付き、人との繋がりを大切にすることで、人生のピンチはチャンスに生まれ変わるのかもしれません。言葉の全てが聴衆に向けた応援で、賛辞を求める美談ではなかったのも印象的でした。オンラインではありましたが、岩本さんの「気」が聴衆を包み、全員のレジリエンス度が一気に上がった感覚もありました。


講演会に一緒に参加してくださった皆様、本当にありがとうございました。皆様と一緒に学ぶ機会をこれからも企画していきたいと思います。リクエストやご意見等ありましたら、お問い合わせフォームから是非ご連絡ください!



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