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次世代のリーダーに必要な要素とそれを育む5つの方法

明けましておめでとうございます。本年もJPS Groupをよろしくお願いいたします。JPS Groupでは今年もセミナーの開催やSNSで子育てに役立つ情報の発信にさらに力を注いでいきたいと思います。今年最初のブログでは、アメリカや世界で活躍するある日本人女性をご紹介し、リーダーとして彼女が持つ共感力の重要性、子どもの共感力の育み方の5つのポイントについてご紹介します。

いまなおパンデミックの真っ只中、国によっては新型コロナワクチンの接種拡大に伴って学校が徐々に再開され、経済活動も活発になってきたかと思いきやオミクロン変種の出現によって先行き不透明感が増しています。先行き不透明で複雑性が増している世の中で新たな環境に適応し世の中をより良くしようと活動し続ける日本女性リーダーたちがたくさんいます。


アメリカ在住の実業家で投資家でもある花沢菊香氏

今日ご紹介するのは、ファッションブランドVPLのCEO(最高経営責任者)かつ「ファッションガールズ・フォー・ヒューマニティ」の創立者である花沢菊香氏です。ガル・ガドットなど多くのハリウッド女優たちにも御用達の人気ファッションブランドVPLのCEOとしてご活躍中のアメリカ在住の実業家で投資家でもある花沢氏。ハーバード大学でMBA経営学修士を取得後、VPLを設立されました。Wall Street Journal, CNBC, BBC, Forbes, New York Times, Vogueなどアメリカの主要メディアで取り上げられている花沢氏ですが、東日本大震災直後には、ニューヨークのファッション界の日本人女性たちに呼びかけて非営利団体の「ファッションガールズ・フォー・ヒューマニティ(FGFH)」の創立、デザイナー衣料品の販売で5000万円を超す義援金を集めて復興のために寄付されました。パンデミックに突入してからはいち早く医療関係者用防護服の型紙をオンラインで無料で提供するというファッション界では画期的な取り組みを始め、防護服の型紙へのアクセスはなんと180カ国から30万人からあったといいます。その後も、FGFHは世界のファッションとデザイン業界のプロたちと連携を取りながら、「援助を必要としているさまざまなコミュニティに向けた人道支援や寄付」を続けています。現在はファッションビジネスを通じて社会に貢献する社会貢献イニシアティブの立ち上げの経験が豊富な方です。


花沢氏、ファッション界の革命を目指しYabbeyを設立

花沢氏はサプライチェーンの労働者の賃金が最低賃金を大きく下回るという課題についても、関心が高く、ファッション界のサプライチェーンの労働者の賃金を保障するために、消費者から衣服などの製造者(労働者)に直接代金が支払われるプラットフォームを作り、サプライチェーンの仕組そのもの、価格構造、依然存在するスウェットショップ、大量に発生するファッションの廃棄問題など解決しようとしています。それが、花沢氏が今年から新たにスタートさせるYabbeyという型紙・裁断ずみ生地のセットを含めたファッション関連商品を販売する「分権化されたDIYファッションマーケットプレイスです。搾取のないサプライチェーンの実現に向けてファッション界の流通システムの革命に挑むべく、Yabbeyを設立し、2022年1月から本格始動させます。


花沢氏は、ファッションの構造的な問題に着目しました。まず、商品が届くまでの道のりがとても長いということです。商品の生地は実際に消費者の手元に届くまで6万キロ移動し、これは地球を1.5回転していることになり、二酸化炭素排出量も大きいそうです。また、デザインから納品まで1年かかるため、需要と供給のずれが顕著になる上に、小売店ではキャンセルが可能なのでしわ寄せが賃金に来ていて、小売価格の10分の1が工場に支払われているという今や誰も儲からない仕組みができてしまっているのです。その上、商品の8割が売れ残って廃棄されているのです。特に、パンデミックに入ってからは、DIYがますます流行り、例えば、昨年歌手のHarry StylesのカラフルなセーターをTikTokのファンが自ら編むという動きが見られました。デザインさえクラウドにオープンソースにして提供したら生産はどこでも誰がやってもいいということがわかったそうです。


A dog wearing a Harry Styles colorful sweater
Harry Stylesのセーターを着る犬

次世代リーダーに必須の要素

こうしたシステム変革をもたらすような類まれなリーダーシップを発揮できるようになるにはどのような要素が必要なのでしょうか。花沢氏は、リーダーとして創造力、行動力、マネジメント力、チームワーク、忍耐力、交渉力などいろいろな高いスキル・知識をお持ちですが、世界規模の社会インパクトをもたらすのに必須の高い共感力があると思います。社会貢献できるリーダーになるにはいろいろな要素がある中、私は特にこのEmpathy(共感)の力が重要だと思います。Sympathy(同情)とは、人の気持ちを共有すること、同じ気持ちになることを指します。一方、 Empathy(共感)は 人の身になって考え相手の気持ちを想像したり理解したりすることができるが、必ずしも自分の気持ちとして同じ感情を持たないという意味の違いがあります。つまり、Empathy(共感)は人のものの見方や他の人を尊重することで、他人の立場で考え、思いやりを持つことを意味します。


現在のパンデミックのような自分を環境に適応させないと解決できない適応型の課題を乗り越えるには、まず課題に関わる人々やシステム全体について共感し、その痛みを感じるだけでなく自分はその中で何ができるのか考えられることが求められます。つまり、私利私欲でなく自分より大きなもののために行動できる必要があります。


子どもたちの「共感力」を育むには

では、未来を担う新たなリーダーとなっていく子どもたちの「共感力」を育むにはどうしたらいいのでしょうか。この領域の研究者と実務家からまとめた要点は以下になります。(cf. Harvard Graduate School of Education, Making Caring Common Project.)思いやりは言語やスポーツなどに例えられ、継続的に育まれなければならないものです。


1. 自分の子どもに共感し、他の人に対する共感を感じる者として模範になる

まず自分の子どものよく知るために話を聞く耳を持ち、さまざまな課題に直面している自分と異なる人に対して共感を示す。(親子で定期的にボランティアなどのコミュニティサービスに取り組むのも良い。)親としてセルフケアを心がけ内省する機会を設ける。


2. 人への思いやりを最優先して倫理面での期待値を高く設定する

「一番大事なことはあなたに思いやりがあって、その上で幸せなことなのですよ」と明瞭に伝えること。子どもの学校の先生や課外活動の指導者に成績以外にも自分の子どもがグループの中で思いやりのある子か尋ねる。家でお手伝いをさせ、機嫌の悪い時でも礼儀正しくするなど、自分中心に世界が回っていないことを伝える。 


3. 思いやりを実践する機会を子どもに提供する  

家族で課題に直面したりけんかしたりした時に、家族会議を開き、親子でお互いの意見に耳を傾ける。お友達とけんかになった時に相手の物の見方について尋ねる。日常生活や本やテレビで見かけた思いやりに溢れる人、思いやりにかけた人、倫理的なジレンマについて話し合う。他の多様な人を巻き込んで地域社会の課題に取り組む。


4. 子どもの関心の対象を拡大する

自分の家族や友人だけでなく、自分と異なる人々に対して思いやりを持てるようにすることが重要。できるだけ人や物事を多角的に見られるようメディアを通じて広く人が直面している苦難や課題を知る。別の国や地域の子どもの経験について知る。自分があまりよく知らない人の話もよく聞く。その上であまり複雑でなくて良いので行動を起こすことを促す。


5. 子どもの自制心を養い 、感情を有効にコントロールできるように育てる

子どもの人を思いやる気持ちが否定的な感情に押さえ込まれていることがある。悲しみ・怒りなどの否定的な感情を特定し、なぜそのような気持ちになるのは話すよう促す。自制への3つのステップ(立ち止まり、鼻から息を吸い、口から息を吐き、5つまで数える)を実践する。落ち着いている時に取り組み、落ち着かない時に一緒にやってみる。争い事を解決する中で異なる対処法をロールプレイし両者の気持ちを理解しようと試みる。保護者がつらい気持ちになっているのに子どもが気づいたら、それにどう対処しようとしているのか話す。


一人でも多く高い共感力のある人間を育てることができれば、少しずつでも世の中が良くなっていくのではないでしょうか。親子共に一歩ずつ継続してますます共感力を育みたいものです。


Risako Watanabe


参考文献

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