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公立学校の対面授業再開にあたって-セルフケアにも繋がるreappraisal intervention(認知的再評価介入法)のご紹介

Updated: Aug 27, 2021


地域によって状況は異なりますが、私の住むサンディエゴ近郊の公立学校は、18ヶ月間対面授業が再開しませんでした。春先から一部登校再開されましたが、全面登校再開は9月から。新入生も進級生も同様に、新しい先生、新しいクラスメイトとの出会いを迎える新学期となります。

しかし、変異株の出現でパンデミックの終息は一層見えない状況となっています。12歳からワクチンの接種は可能ですが、種々の理由から接種に抵抗感を持つ方も少なくないと聞きます。また、ワクチン接種が難しい12歳未満の子どもは、周囲の大人が感染対策を徹底することでしか守られません。フロリダや南部の州では子どものCOVID入院患者も増えているということですから、9月の対面授業再開を不安に思う保護者は多いかもしれません。


パンデミック下で増すこうしたネガティブな感情をどう払拭したらいいのでしょうか?

つい先日Nature Human Behaviourに発表された研究では、“reappraisal intervention(認知的再評価介入法)”の効果が実証されていました。2020年の5月から10月に実施された大規模な調査で、対象者は87ヵ国からランダムに抽出された21644人(31.91±14.52歳)でした。この研究で紹介されている認知的再評価介入法には2つの方法があります。

まず、現状をポジティブに解釈し直す、reconstrual(再解釈)という方法。例えば、「手洗い、顔に触れない、ソーシャルディスタンスを保つ等、単純で効果的な方法が私や愛する人たちを感染や感染拡大から守ってくれる」とか、「私たちは、世界の歴史から、keep calm and carry on(平静を保ち、普段の生活を続けよ)が厳しい時代を切り抜けさせる秘訣だと知っている」といったポジティブなメッセージで、パンデミックという圧倒的な脅威をも、自分たちの力で対峙し得ると捉え直させる介入方法です。

次に、現状のポジティブな結果に注目させる、repurposing(再利用)という方法。

例えば、「パンデミックは社会との繋がりの重要性に気付かせてくれ、本当に大切な人を再確認させてくれた」とか「医療システムは驚くべきチャレンジに取り組んでいるし、その学びが一層打たれ強いシステムを構築するだろう」といったメッセージで、パンデミック下で気付いた/学んだポジティブな結果に注目させる介入方法です。

要するに、手洗いやマスクの着用といった基本的な取り組みの継続は無意味ではなく重要で意味のあることだと、パンデミックという現状を再解釈し、パンデミック下での新たな気付きや学びをポジティブに再利用することが、不安を払拭する上で有効ということ。国、学歴、社会経済的地位に関係なく同様の結果が得られたというのですから、全世界で汎用しやすい介入方法といえます。不安が減ると楽観的になって感染対策(手洗いやマスクの着用)を怠る懸念も持たれますが、この研究でそれも否定されています。また、パンデミック下のネガティブな感情がきっかけとなって増える心身の不調(例、不眠、アルコール・薬物の消費量の増加、集中力の低下、家庭内不和)も解消できる可能性が示唆され、認知的再評価介入法はセルフケアにも繋がることがわかります。

自身のストレスをポジティブに捉えると心が軽くなる経験は皆さんも少なからずあるはずですが、有効性が証明された具体的な方法が提示されると「やってみようかな」と思いませんか?周囲の方への声かけにも利用できるといいなと思い、今回ご紹介しました。

対面授業再開にあたって私たち保護者ができることは、感染対策の徹底とポジティブな考え方を持つことなのかもしれません。秋の登校再開に際して、子ども達の反応は色々です。友達との再会に心躍らせる子もいれば、パンデミック下の非日常に慣れすぎて日常に戻ることに微妙な反応を示す子も・・でも、大なり小なりどこかで不安を抱えているのは同じはず。彼らの声に耳を傾けるためにも、保護者のセルフケアは本当に重要です。

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