部屋の外に漏れてくる子ども達のはしゃぐ声が交響曲のように聞こえると話す米国人の友人がいました。皆さんのお宅ではどうですか?我が家には声のボリュームがひときわ大きい3歳と5歳の娘がいますが、2人の笑う声ですらハーモニーに聞こえたこと・・ありません。そればかりか、親ですら耳を塞ぎたくなる大きな音ですから、ご近所の迷惑が気になって仕方ありませんでした。子どもの声が交響曲に聞こえるような稀有な隣人ばかりではないはずなので、私は、子どもがケンカをする度に仲裁に入り、はしゃぐ声が大きくなると静まらせることにばかり意識を向けていました。でも、その視点そのものが間違っていたのかもしれないと気付かせてくれたのが、「IPA Play in Crisis :危機的状況における遊び 子どものくらしに関わる人のためのガイド」でした。
IPAとは、子どもの遊ぶ権利を基本的人権として守り、維持し、促進することをミッションとした国際NGOです。COVID-19によるパンデミック下で、一層大人は子どもたちの遊びをサポートする必要があると、今年の4月に上記のガイドを発行しました。このガイドは、遊びの重要性を教えてくれるだけでなく、具体的な遊びの提案もしてくれているので、小さなお子さんのいるご家庭は必見です。中でも、子どもの遊びをサポートするためにも「ご近所の理解を求める」というIPAのアイデア、私には目からウロコでした。「他人に迷惑をかけてはいけない!」と言われて育った私には、子どもの出す騒音が他人に受け入れてもらえる可能性なんて考えたこともなかったからです。
また、1989年に国連で採択された「子どもの権利条約」31条に、遊びに関する権利が記されていることも始めて知りました。子どもには遊ぶ権利があるという認識に基づけば、子どもがうるさくするのはある程度仕方のないこと。全ての大人はその権利を守るために子どもをサポートしなければなりません。子どもがうるさくする理由や意味を考えるためにも、ただ静まらせるのではなく、しばらく様子を見ることも大事なようです。そのためにも、ご近所の迷惑にならない時間帯に子どもが少し音を出してしまうことをあらかじめ隣人に説明しておくといいというIPAのアイデアは「なるほど!」でした。
とはいえ、積極的に「ご近所の理解を求める」のは私にはハードルが高く、まずは階下の隣人に子どもの出す音の謝罪をしました。すると、「自分にも経験のあることだから」と笑顔で返してくれた上に、日々大きくなる娘の成長を喜んで下さいました。寛容な隣人に感謝していると、他の隣人もかなり寛容であることが分かりました。娘たちの大ゲンカの声が玄関から漏れ聞こえるとお向かいの女性はラズベリーを持って我が家にドアノック。喧嘩両成敗ならぬ両褒美という平和的な仲裁をはかってくれます。若い時分にベビーシッターの経験があったという隣人は、立ち話でクラフトの提案までしてくれました。
「他人に迷惑をかけてはいけない!」と殊更に日本人気質を出していましたが、受け入れてもらえる「迷惑」に感謝する方が大切だと知りました。感謝は隣人との関係性に繋がり、子どもたちに対する理解が一層深まるようになったからです。隣人との個人的な関係が生まれると、子どもたちも大きな音を出してはいけない時間帯を理解するようになりました。迷惑をかける相手が誰なのかを知っているからです。コロナ禍においても寛容な隣人と、子どもの成長、本当に有難いことばかりです。他人の迷惑ばかり気にしていた頃より私もずっと心の余裕ができました。お蔭で、耳を塞ぎたくなるような大ゲンカは激減したものの・・子どもの喧噪が交響曲に聞こえる友人の心境にまでは至りません;育児は修行・・仁美
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