ここカリフォルニア州で、Stay-at-Home Order(外出禁止令)が出されてから、早くも一ヶ月が経とうとしています。
外出しないことの重要性については、ニューヨークの病院内のビデオや新型コロナの3つの顔でも取り上げましたが、周りを見渡す限り、この重要性は広く認識され、Essential Worker(エッセンシャルワーカー:医療従事者、救助隊・救急隊・消防隊・警察など生活に不可欠な職種の人)として働きに出る場合を除いて「自分や一緒に暮らす人のため」「社会全体のため」に、いま皆が真剣に巣篭もりしている状況です。
今日は、そんな外出禁止令下のサンディエゴの街の様子、特に人々が見せてくれる「感謝の気持ち」や「さり気ない優しさ」、「これまでにない変化」の側面から書いてみたいと思います。
エッセンシャルワーカーへの感謝の気持ち
私たちが家にいる間も、ずっと働き続けてくれているエッセンシャルワーカー、中でも感染者の治療に当たっている最前線の医療従事者や、人と接する機会が多いスーパーマーケットで働く人々への感謝の気持ちは日増しに大きくなり、その思いは様々な形で表現されています。
ドクターの家の前に立てられたメッセージ
「あなたは私たちの為に働いてくれている。だから私たちはあなたのために家に居るよ。ありがとう!」
道端のフェンスに貼られたメッセージ
「エッセンシャルワーカーの皆さん、ありがとう。感謝しています!」
感染を怖れて仕事を辞めた人も多いスーパー業界で、店員さんに「Thank you for keeping working for us!(働き続けてくれて、ありがとう)」という人々。それに対して「Thank goodness, I have a job! (仕事があって有り難い)」と答える店員さん。
エッセンシャルワーカーを優先して店内に入れるスーパーも出てきています。
地元紙San Diego Union Tribuneは、毎晩、住民が医療従事者を讃えている映像も、ウェブサイトに掲載しています。
お互いを気遣う さりげない優しさ
いま人々が外に出られるのは、1〜2週間に一度だけ食料品などの買い出しに行く時と、家の周りを散歩する時。
もともとアメリカでは道で誰かとすれ違う時は、知らない人でも「Hi!」と声を掛け合う習慣がありますが、今は散歩中もSocial Distanceを保って、大声を出すことすら憚られるため、離れたところから手を振ってニッコリ笑う人が増えました。
スーパーでは列に年長者がいると、前の方に割り込ませてあげる人も。もちろん文句を言う人は見たことがありません。
路面には、誰かがチョークで書いたメッセージが。
「気をつけてね。愛しているよ!ママより ハグとキスと♡を込めて」(消防署前)
「みんな一緒だよ、がんばろう」(歩道)
地元のラジオ局は毎日決まった時間に、なんとクリスマスソングを流し始めました。
「一年で一番楽しい時期の音楽を聴いて、気持ちが盛り上がるお手伝いをしたいから」という粋な計らい。
SNSでは、花や樹、動物、ペットやお料理などの写真、ユーモアいっぱいの笑える動画、音楽の動画など、見た人が癒され楽しくなるものを載せてくれる人が多くなりました。
出口の見えないトンネルの中で、皆が何らかの形で、さりげない優しさを見せてくれているのを感じます。
What can I do now? いま自分にできることは何だろう?
その一方で、このパンデミックによって大切な人が旅立った方、今も病の淵におられる方が大勢います。失業や減給、倒産などの経済的打撃や、感染に対する恐れや不安、差別、DVといった精神的打撃を受ける人も増え、もたらされた甚大な影響を「無いもの」として蓋をすることは出来ません。怖れを微塵も感じないという人はいなければ、影響を全く受けないという人もいないでしょう。
けれど、そんな混沌の中で、これまで当たり前だと思って続けていたことに対する変化や新たに生まれるものも見えてきました。
あらゆる職種において対面の仕事ができなくなり、いち早くZOOMやYouTube等のツールを取り入れて働く人や会社・学校などの組織、ヨガやフラダンス、エクササイズなどZOOMを使って有償無償でレッスンを提供する人、演奏をYouTubeで配信するプロの音楽家などなど、新しい形で活動をする人たちの例は枚挙に暇がありません。
ボランティアグループに関しては、1)競争の激しい科学研究界でも、パンデミックの1日も早い解決のため、一定の条件を満たす研究者たちが自由にアクセスできる無料のデーターベース、2)高齢者や身体の理由で買い出しがままなら無い人のために買い物を代行するグループ 3)「誰かの助けを必要としている人」と「誰かの力になりたい人」が繋がる場など、様々なものが誕生しています。
マスクが手に入らない今、毎日コツコツと布を裁断し、ミシンや手でマスクを縫い、ご近所や施設、病院の非医療従事者と患者さんに寄付する人たちも大勢います。
あるいは、これまで忙しすぎたため「こんなにのんびり暮らしたことは初めて」「家族と話せる時間が増えた」という人もいて、いつか再び巣から出て動き始める日に備えて羽根を休めています。
また、休校中のお子さんと24時間一緒に過ごすお母さんたちや、家族が自宅勤務になった家庭の主婦にとって、今は普段にも増して忙しい生活であり、バランスのとれた食事作りや安心して暮らせる環境を整えることは並大抵の仕事ではありません。
・・・つまり、こうして各々が終息の祈りを込め、工夫を凝らしながら、黙々と、自分の出来ることをやっている・・・そんな毎日です。
外出禁止令下の今は、言い換えると「What can I do now?」を自分に問いかけながら、何にフォーカスをしたいのかが試されている時なのかもしれません。
こんな時だからこそ、「人の優しさや強さ」に心が温まる一瞬一瞬を喜び、「人間のResilience(復活力)」「混沌から何かを生みだす可能性」を強く信じていたいと思います。
With love, Hisako Tachikawa
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