世界中に新型コロナウイルスが広がり、外出自粛(アメリカで場所によっては外出禁止など)が求められる中、一番身近で気になるのがコミュニティの最小単位である家庭内での感染、「家族感染」です。ずっと自宅にいると、外出先からの帰宅直後いつもしていた手洗いなどの衛生管理が緩みがちですが、無症状の患者が大勢いる現在それではいけないそうです。今回は友人であり北里大学北里研究所病院で総合内科専門医である脳神経内科部長の飯ケ谷美峰(いいがやみほ)先生に家族感染を防ぐ方法の12のポイントについて話を聞いてみました。
渡邊「社会で新型コロナウイルスの感染が拡大する中、日本では家族内感染が増えているそうですね。」
飯ヶ谷先生
「家庭内に一人患者がいる場合、家族への感染を防ぐためには相当な注意が必要です。最近の入院パターンは夫婦や親子での入院。特に、ご主人や親は重症化しています。知らず知らずのうちに広がる夫婦間の感染、親子の感染に重々注意する必要があります。」
家族内感染を防ぐために家庭でできることを以下にまとめました。取り入れられることがあれば、ご参考にされてみてください。(これは今日現在での情報であり、まだわかっていないことの多いウイルスにつき刻々と状況が変わっているので常に最新の情報を得るようにしてください。)
1. 室内で
マスクを着用する。
社会的距離を取る。
窓を開けて換気する。空気清浄機や換気扇をフル稼働してみる。
2. 寝室で
感染が疑われる場合は可能な限り寝る場所を分ける。
3. 食事について
向かい合わず横に並んで食事する。食事時間をずらす。
食器やカトラリーは、あれば高温水が出る食器洗浄機へ入れる。
食品は基本的には加熱調理する。
デリやテイクアウトの食事は自宅で再加熱できるものを選ぶ。
パンもトースターやオーブンで再加熱する。
(処理途中でウイルスに汚染されている場合も想定して)お刺身など加熱せず生の状態でいただくものは避ける。
4. トイレでは
糞尿に新型コロナウイルスは出ている。トイレ掃除は必ず使い捨て手袋を着用して行う。手袋を脱ぐとき汚染している側をふれないようにめくりあげて外すこと。
次の入る人のためにトイレットペーパーの端を折らないこと。なるべくトイレットペーパーの本体に触れないように勢いつけて切る。
使い捨てペーパータオルを使う。
ドアノブやペーパーホルダー、蛇口をアルコールでこまめに拭く。
【参照 新型コロナウイルスを不活化できる洗剤などについて】
5. 洗面所では
タオルは共有せず一人一人別々のものを使用する。
歯磨き粉は共有せず一人一人別々のものを使用する。
6. 洗濯について
洗濯機はなるべく高温設定にして使う。
基本的に、衣類はウォッシャブルなものを着る。着回さずその都度洗う。
7. 玄関周りについて
外を歩き回った靴の裏には新型コロナウイルスが付着していて汚染されていると思うこと。アメリカは土足とウチ履きのエリアのゾーニング(線引きして分割)に留意する。テープなどで玄関のゾーニングをするのも有効。
室内は靴を脱いだほうが良い。室内はウォッシャブルなスリッパを履く。
8. 手洗いについて
手洗いは原則中の原則。ただし、手荒れしないよう、スキンケアをすること。皮膚は最強のシールド。皮膚を傷めてはいけない。手洗いができればアルコールジェルは不要。
アルコールジェルは手洗いできない場面に使うこと。
9. 顔を触らない
目を手で触らない。新型コロナウイルスは目などの粘膜から体内に入る。新型コロナウイルス結膜炎から新型コロナウイルス肺炎に移行することもある。
同様に、鼻の穴、耳の穴も手洗い前の手で触れてはいけない。
10. 可愛くても飼っている猫はやたら触らない
猫科は、ヒトから新型コロナウイルス感染することがわかっている。猫からヒトへの感染が成立するかはまだわかっていない。
11. 帰宅後のスマホなどの殺菌消毒について
帰宅後メガネやスマホなどのタブレットをアルコールで拭く。寝る前にも拭くとより安全。
12. 感染の可能性に気づいたら
毎日体温測定する。(体温計は毎回消毒する)
家庭内完全隔離を目指す。
医師との遠隔医療を活用する。
自宅に1個パルスオキシメーター(酸素濃度計)を準備しておいても損はないでしょう。健康なうちに数値がいくつになっているか確認しておく。96-100%なら大方問題ない。感染が疑われている場合、普段の値より2%下がったら注意(時間をおいて複数回測ってみましょう)。大幅に下がったら病院に連絡して向かう。パルスオキシメーターも使いまわす場合は消毒しましょう。
体調が急変し息切れが出た場合、連絡の上病院へ向かう。こうした事態を想定して、入院お泊まりセットも準備しておく。
【参照】
日本呼吸器学会による「パルスオキシメーター」日本語での解説 https://www.jrs.or.jp/modules/citizen/index.php?content_id=139
Consumer Reports 記事"People Concerned About COVID-19 Are Using Pulse Oximeters to Measure Oxygen Levels. These Are the Pros and Cons."(Consumer Reportsによるパルスオキシメーター利用の是非についての記事。英語のみ。)
米国:Centers for Disease Control and Prevention (CDC)の関連リンク
日本:厚生労働省「新型コロナウイルス感染症の感染拡大を踏まえたオンライン診療について」のリンク
「軽い症状が数日続いた後に突然数時間で悪化するリスクがあるため、息切れしたらすぐに医師に相談できるようにしておくことが大切です。今回の新型コロナウイルスは本当にしつこいのです。症状なく3週間以上経過してもPCR検査で陰性化しないので復職できない人も医療現場にいるようです。」
「コロナパニックの今の時期は、やりすぎくらいでもいいのです。大丈夫であったなら後から笑うだけで済みます。でも発症してしまったら洒落にはならない手強いウイルスです。」
三十年近く医師として勤めている飯ケ谷先生には大いに説得力がありました。最近のブログ記事「新型コロナウイルスってなんだろう?」、「なるほど!新型コロナウイルスがわかる3つのメディア」や「マスク着用の目的と効果的な使用方法」など他の新型コロナウイルス関連のブログ記事も合わせて読んでいただき、医療従事者や科学者たちなど信頼できるソースに耳を傾け、知識武装し、しっかり自衛していきたいものです。
[北里研究所について]
北里研究所は、ペスト菌の発見、破傷風菌の治療法の開発を行った細菌学の父、北里柴三郎先生が創立しました。当研究所で長年研究を続けられてきた大村智先生(名誉理事長、現顧問)がイベルメクチンの創薬にてノーベル賞を受賞したのは記憶に新しいところです。感染症学の北里として、付属の病院では徹底的に感染管理を学びます。(海外では、イベルメクチンの新型コロナウイルスへの効果も報告され始めています)
学校法人北里研究所「COVID-19対策北里プロジェクト募金」のお願い
北里研究所では、北里生命科学研究所(2020年4月から「大村智記念研究所」に改称)と北里大学医学部・北里大学病院とが連携・協力し、治療薬の早期探索に全力であたります。その上で、世界中の人々からこの病気への不安を払しょくすることに迅速に取り組みます。是非、多くの皆様からのご支援をお願い申し上げます。
渡邊理佐子
こちらの記事内容は情報提供を目的に作成しています。内容は総合内科専門医、神経内科専門医である医師の個人の見解であり医師が所属する組織の見解ではありません。見解は2020年4月29日時点の情報に基づくものです。
【関連情報ホームページ】
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